子ども会社のごあんない


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 平成9年の夏休み、小学4年生の丸野遥香は愛犬パトリックを伴って初めて散歩をする。途中、道端でパトリックはウンチをしてしまう。 驚いた遥香は、そのウンチを手で持ち帰る。どうにかしなければと考えた結果、紙でスコップのような形の道具を作る。これをたまたま夏休み の自由参加となっていた発明工夫展「都城科学技術プラザ」にペーパー スコップと名付けて出品し、山田町長賞を受賞する。  
  その秋、遥香の父でありデザイン事務所を営むわたしは、得意先南栄工業の石神専務との談話中に、先の話題をしたところ、それは商品としての可能性があるということになり、市場テスト商品のオーダーを受ける。まず、商品開発プロジェクトを発足し、11月よりスタートする。
  そこで、この開発プロジェクトの最高責任者を丸野遥香と決定した。 スコップのスタイルデザインや色・柄、パッケージング、さらには文章表現の一つ一つから彼女にプレゼンしながら承諾をもらい、それぞれのパーツを発注して、友人達に手伝ってもらいながら、多少手作りに近い仕上がりであったが、最初の商品としてその年の暮に出荷する。

 商品開発プロジェクトを推進する際、購入対象が子供の場合、子供をモニターとして参加させ、新商品を市場に出すというケースはある。   
  しかし、今回のようなケースは全国的に見ても稀だと思う。 わたし自身、初めての経験である。確かに最初は戸惑うが、子供の意思決定によって進めてみると、何よりも決断が早い。何故なら、子供の 「直感力は冴えている」のであり、それがどれだけ大切かを学ぶ。 大人であるわたしはそれ以外にも、このプロジェクトを通して、さまざまな経験と気づきを得られた。その中で、特に大きいのは「子供が社 長の会社」があってもいいのではないか、ということである。 むしろ、ハルカファミリーを設立する際、「社長はわたしよ」と申し出たのだからそれに従ったまでのこと。
  実際は、法的な規制があり法人での代表取締役は難しい。しかし、それより大切なのは、まず家族の中で子供を「社長」として付き合ってみる。そうすると、家族の見方が変わり、実に楽しく創造的になるという経験を味わえる。 わたし達は、このハルカファミリーと名付けた「子供会社」を通して、 環境の大切さを子供からのメッセージとして世界に届けたい。

  <平成10年5月5日子供の日に誕生>
     保護責任者 丸野勇・丸野孝子